低エネルギー分離技術の創生 / 高性能冷却システムの開発 / 二色LIF法によるスカラー分布測定 / 粉末状竹炭による飲料用原水の浄化

気液二相流における物質移動特性



 Fig. 気液二相流プロセス

 気液二相流は、気泡塔などとして工業プロセスにおいて広く利用されているが、 装置内における流動状態が非常に複雑であるため、 熱・物質移動や流動特性について未だ不明な点が数多く残されている。 とりわけ、液中を上昇する気泡周辺における物質移動現象については、 気液界面の移動や吸収による体積変化などにより物質移動特性が 時々刻々変化するため、従来、実験においても数値計算においても、 定量的に評価することは非常に困難であった。このような現象を 実験的手法により研究する場合、測定に用いる計測手法には、 非定常現象に適用可能な速応性や、場の構造に関する情報を得る ために多点同時性を有することが求められる。既存の方法の中では、 動画像処理を用いた方法が有望であり、中でも、温度・濃度などの 測定にはレーザー誘起蛍光法(LIF)の利用が適していると考えられる。 しかし、光学的性質が不均一な混相流プロセスにおいては、 特に界面の周囲で反射や干渉により明度変化が生じると考えられ、 蛍光強度から物理量の値を算出するLIF法においては、非常に大きな誤差の発生要因となる。 このような明度変化の影響を低減する方法としては、 2つの異なる蛍光物質を用いる二色レーザー誘起蛍光法が提案されている。 しかし、既往の研究における測定対象は、単相系における自然対流現象[1,2]や、 対象が混相系の場合でも静止した気泡や液滴周りの物質移動現象[3]であり、 移動する界面が存在する混相流におけるスカラ量の測定例はこれまで無い。 また、二色LIF法は通常二台のモノクロビデオカメラを使用するため、 ビームスプリッタによるスペクトル特性の変化などによりさらに 誤差が発生すると考えられている[2]。
参考文献 [1]J. Sakakibara and R. J. Adrian, Exps. Fluids 26 (1999) 7-15, [2]H. J. Kim et al., Int. J. Heat Mass Trans. 46, 21 (2003) 3967-3974, [3]S. Someya et al., J. Oceanography 60 (2004) 789-795

単一のカラーデジタルビデオカメラを用いた二色LIF法の開発


 Fig. 実験に用いた光学系



 Fig. 本手法によるpH測定精度(横軸:pHメータによる測定値、縦軸:本手法により算出したpH値)

 そこで本研究室では、 1台のカラービデオカメラのみでpHを測定する手法を開発した。 なお、面内の明度分布の影響と検定実験時に生じる 偶発誤差の影響を低減するため、 画面内の各点において得られた検定曲線をもとに、 校正式内のパラメータについて位置依存性を考慮している。
 なお、HORIBA製pHメータによる測定値を基準とした場合、 可視化領域全体における本手法によるpH測定誤差の平均値は、 pH=3〜6において約2.3パーセントであり、 位置依存性を考慮しない場合に比べて誤差の大きさは約半分になる ことがわかった。これより、本手法は 従来法と比較して十分な精度を有することがわかった。

光学的性質が不均一な場への適用性


 Fig. クエン酸溶解プロセスにおけるpHの定量化(左:原画像、右:pH分布)


 また、光学的性質が不均一な場への適用性について検証するために、 クエン酸粉末の溶解過程におけるpH分布を定量化したところ、 粉末表面における反射や密度分布による干渉等で明度変化が 生じる場合においても、その影響を受けず高精度にpHを定量化可能であることが確認された。

今後に向けて

 今後は、本研究室で開発した二色LIF法を用い、 気液二相流における気泡挙動と物質 移動特性変化との関係について定量的に調べていく。


二色LIF法関連研究成果

二色LIF法による単一気泡の溶解現象の計測
化学工学, vol. 80, No. 8, 2016, pp. 484-487
(公益社団法人化学工学会 会員の方は無料でご覧頂けます)
静止単一気泡からのガス溶解特性について
「Transient Behavior during a Gas Dissolution Process around a Stationary Single Bubble」
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN, vol. 41, No. 7, 2008, pp. 553-556

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