持続可能な社会を実現するためには、エネルギー・環境問題や医療・高齢化の問題を解決する必要があります。これらの問題解決を図るうえで、電気エネルギーと物質の変換を担うエネルギー・物質変換デバイスが重要と考えます。田巻研究室では化学工学を基盤として、反応工学や物質移動論・全体最適化を図るプロセスシステム工学を融合させ、実験による材料開発とモデル計算を併用した反応・物質移動解析に基づく現象理解とをフィードバックを掛け合いながら進めることで、エネルギー・物質変換デバイスの合理的機能設計に取り組みます。具体的には、二酸化炭素(CO2)の電気化学還元による高選択的な物質生産や、生体触媒である酵素を用いた酵素型バイオ燃料電池の研究開発を進めています。
CO2の電気化学還元
地球温暖化を抑制するためには、CO2排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする必要があります。CO2実質ゼロを実現するためには、エネルギー・燃料源を化石資源から太陽光や風力等の再生可能資源へ転換するだけでなく、産業界から排出された高濃度CO2等を回収して有用化成品へと変換するCO2資源化技術の開発が求められます。また、エネルギー・燃料源を再生可能資源へと転換した場合、非化石資源からの化成品製造も必要となります。そこで、再生可能資源由来の電気エネルギーを活用したCO2の電気化学還元(電解)による高選択的な物質生成に取り組みます。
酵素型バイオ燃料電池
酵素型バイオ燃料電池は、生体触媒である酵素を利用して燃料の化学エネルギーを電気エネルギーへ変換するデバイスです。常温付近で物質を酸化・還元できる生体触媒の特性を活用することで、生体に安全・安心なグルコースやエタノールなどを燃料に利用できることが利点として挙げられ、人体の近くで使用するポータブル機器や医療補助具の電源として期待されます。そこで、酵素が有する高い反応速度を有効に活用したバイオ燃料電池の高性能化に取り組みます。