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生体血管網模倣技術
 現在の医療において、治癒が困難な臓器疾患の根治的治療法は臓器移植に限られています。しかし、ドナー不足により臓器移植を受けることができる患者はほんの一握りです。もし、臓器を人工的に作ることができればドナー不足に解決につながります。人工的に臓器を作り出すためには、細胞にとってライフラインである血管網を再現する技術が必須になります。本研究室では、これまでに様々な血管網再現法を開発しています。ここではその一部をご紹介します。
 臓器内部の毛細血管の間隔は100-200 μmであり、この間隔がさらに広がってしまうとすべての細胞に十分な酸素や栄養素を供給できずに生体は臓器を維持することができません。したがって、人工的に臓器を作り出す場合にも1本1本の血管の間隔が厳密に100-200 μmに制御された血管網を作製する技術が必要です。本研究では、血管の鋳型として、その直径を厳密に制御できる微細な中空ゲルファイバーを利用しています(1)。なお、このファイバーのゲル部分には臓器細胞を包括しており、中空部分を血管様流路して利用します。このファイバーを何重にも積層させます。そうすることで
流路の間隔を厳密に100-200 μmに制御できます。実際に、ファイバーの中空部分に培地を流通させると臓器細胞が十分な酸素や栄養素を受け取ることができ、細胞が増殖する様子を確認しています。


(a) 臓器細胞固定化中空ゲルファイバーおよびそれを束ねることで作製される人工血管網. (b,c) 中空部分への培地流通培養0日目(b)および7日目(c)のファイバー断面の写真.

 また、中空部分に臓器細胞を包括後、増殖させることで、線状の微少組織体を作ることもできています(2)。この微少組織体も再生医療分野での応用が期待されます。


(a) 臓器細胞を中空部に包括したファイバーの培養0日目(a)および7日目(b)の写真. 

(1) Takei T., Kitazono J. et al., Vascular-like network prepared using hollow hydrogel microfibers, Journal of Bioscience and Bioengineering 121:336-340 (2016)
(2) Takei T., Kitazono J. et al., Necrotic regions are absent in fiber-shaped cell aggregates, approximately 100 μm in diameter, Artificial Cells, Nanomedicine and Biotechnology 44:62-65 (2016)

  
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