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キトサンクライオゲル
 キトサンは高い生体適合性や生体吸収性、抗菌作用、創傷治癒促進作用を備えた優れた医療用材料です。従来、キトサンからヒドロゲルを作製する際には、毒性の高い化学架橋剤等の添加物が使用されてきました。また、キトサンは酸性の溶媒にのみ可溶であり、その溶液から作られるヒドロゲルも同様に酸性であることから、医療用には不適でした。
 本研究室では、グルコン酸を修飾したキトサンが中性の水に可溶であり、さらにその水溶液を凍結-融解処理するだけでゲル化することを見出しました(凍結-融解処理により得られるゲルを
クライオゲルと呼びます)(1)。


グルコン酸修飾キトサン水溶液の凍結-融解処理により得られるクライオゲル.

 毒性の高い添加物を含まず中性のこのようなキトサンクライオゲルが高い創傷治癒促進作用を有することを実証しました(創傷とは体表面の傷のことを指します)(1)。また、同じく凍結-融解処理によりゲル化するポリビニルアルコールを組み込むことで、より高い創傷治癒促進作用を示すことを確認しました(2)。このクライオゲルの作製時にはタンパク質の変性作用のある化学架橋剤を使用しませんので、増殖因子の生理活性を損なうことなくゲル内に包括できます(2)。


(a) ラット体表面の創傷をキトサンクライオゲルで覆った様子. (b,c) キトサンクライオゲル(b)または医療用創傷被覆材(c)で覆った創傷の治療8日目の様子. 

(1)Takei T., Nakahara H. et al., Synthesis of a chitosan derivative soluble at neutral pH and gellable by freeze-thawing, and its application in wound care, Acta Biomaterialia 8:686-693 (2012)
(2)Takei T., Nakahara H. et al., Effect of chitosan-gluconic acid conjugate/poly(vinyl alcohol) cryogels as wound dressing on partial-thickness wounds in diabetic rats, Journal of Materials Science: Materials in Medicine 24:2479-2487 (2013)

  
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