鹿児島大学工学部先進工学科化学工学プログラムDepartment of Chemical Engineering

卒業生の声 ~経営者の声~Voice

株式会社トクヤマ

取締役常務執行役員  野村 博 氏
1983年 化学工学科修士課程修了

「先進工学科化学工学プログラムを志す皆さんへ」

 鹿児島大学で勉学、研究に励んでおられる皆さん、先進工学科化学工学プログラムを目指している皆さん、皆さんの先輩の一人として、これから夢多き人生を歩まれる後輩の皆さんに少しでも参考になればと思い、私のこれまでの経験や想いを少し述べさせていただきます。 私は、1983年に鹿児島大学工学研究科化学工学科の修士課程を修了し、化学会社である株式会社トクヤマに入社しました。その後、シリコン、シリカを中心に開発、技術の仕事をした後に、自分の発案で中国にシリカとシランの製造販売会社を設立し、工場を建設し、その運営も行いました。そして、いったん日本に戻り、企画業務を経て、マレーシアでシリコンの製造会社の社長を務めました。そして、現在は、トクヤマの特殊品部門の部門長をしながら、海外4社、国内2社の子会社を管轄しています。大学時代には、友人とサークル(ウォークキャンプ同好会)を立上げて楽しみながら、4年生、院生時代には、毎日、夜遅くまで研究室に残って、研究、実験に明け暮れていた事を懐かしく思い出します。 当時、院生は、一講座に一学年一人しかいない時代で、実験設備の設計、製作、実験、整理、論文書きも、先生に意見を伺いながら、それらのほとんどを自分一人でやっていた記憶があります。この時の、いろいろと失敗しながらも、自分で考えた事を自分で実践してみるという経験が、会社に入ってからの自分を支え、良い意味での何でも屋である化学工学(プロセス工学)を学んだ事が、製造会社に必要な知識を身につけ、経験を積み上げる上で、非常に役に立ったのではないかと思います。

 日本は、少子高齢化による人口減少により、マーケットとしての魅力を失いつつあります。また、韓国、中国、台湾といったアジアの国々が実力をつけ、グローバル競争が激化してきています。そんな中で、日本企業(製造業)が生き残って、存続する為には、安くて良い物を安定して造り上げる生産技術を持つことと、広い視野に立って、冷静に客観的に世界のマーケットを見る目を持ち、タイムリーに有効な施策が打てるかどうかだと思います。今、思うと、化学工学は、何でも屋として私の基礎を作ってくれた、非常にありがたい学問だったなと感じています。

 また、地球規模で環境破壊、地球温暖化が進む中で、CO2をはじめとする温室効果ガスの削減対策や水や空気の浄化対策が世界規模で求められてきており、このことは、企業にとっては、苦しい一面もありますが、逆に大きなビジネスチャンスと捉える事も出来ます。今、まさに時世にあった学問、研究に取り組んで、あるいは取り組もうとされている皆さんは、時代が必要としている人材であるわけです。ぜひ、この学問に誇りを持ち、地球を守り、明日の日本を自分が作り出すんだという気概を持って下さい。そして、それに向かって邁進して下さい。